1) 耳コピは、本当はそこまで「才能頼み」の技じゃない
好きな曲をコピーしようとして、
* 何度も巻き戻して
* 指板をウロウロして
* 「なんとなくそれっぽい」けど、本物とは少し違う気がする
そんな経験、あると思います。
一方で、
* 簡単にソロをコピーしてしまう人
* コード進行をすぐ当ててしまう人
* 初めて聴いた曲にも、自然にアドリブを乗せられる人
もいますよね。
ここで大事なのは、
> 🧠 感覚ではなく、理論を"武器"にすれば、耳コピはそこまで難しくないということです。
耳コピが"センスの勝負"に見えるのは、
* 何を手がかりにしているのかが言語化されていない
* 本人も「なんとなくこうかな」と感覚でやっている
からです。
ここでは、その「なんとなく」を手順と言葉にしてしまおう、というのがテーマです。
2) 結論:耳コピのコツは「キーを見つける」こと
耳コピの正体を、一言でまとめるとこうなります。
> 🎯 耳コピのコツは「キーを見つける」こと。キーさえ分かれば、その曲で使われている
* コード
* メロディ
* ソロの音使い
に対して、「だいたいこの辺りだろう」という"当たり"をつけることができます。
これが耳コピの正体です。
これを完全に感覚だけでやっている人もいますが、
> キーとダイアトニックコードの理論さえ分かれば、 > 誰でも同じことができるようになります。最初はうまくいかなくても大丈夫です。この記事とOtoTheoryを使いながら、少しずつ「キーを感じ取る力」を育てていきましょう。
3) 耳コピ4ステップ:ベース → キー → ダイアトニック → 「寄り道」コード
耳コピを理論で説明すると、だいたい次の4ステップになります。
1. 各コードのベース音を聴き、楽器で探して特定する
2. いくつかのベース音から、キーを割り出す
3. キーが分かったら、メジャー or マイナーのダイアトニックでコードを当てていく
4. ダイアトニックから外れるところは、代理コードや"よくある寄り道"を試す
(それでも外れが多ければ、キー自体を疑ってやり直す)
順番に見ていきます。
① 各コードのベース音を聴き、ギターで「同じ音」を探す
最初から「コードの名前」を当てる必要はありません。
まずやることは、とにかく ベース(いちばん低い音)だけに集中することです。
* 1小節ごと、コードが変わるタイミングで
「今、どの低い音に落ち着いているか?」を探ります。
* ここで大事なのは、聴いただけで「これはCだ」と分かる必要はないということです。
やることはシンプルで、
1. 曲を一時停止する or 同じところをループ再生する
2. ギターの6弦や5弦の開放から、1フレットずつ上がりながら
元の曲のベースと同時に鳴らしてみる
3. 「あ、この音だけピッタリ重なるな」というポイントを探す
4. 見つけたフレットの音名は、チューナーアプリやチューナーで確認してOK
こうして、
> 「1小節目は 5弦3フレット(C)っぽい低音、次は 6弦5フレット(A)っぽい…」というふうに、耳+指板のマッチングでベース音を特定していきます。
この段階では、
> 「厳密に合っているかは少し不安だけど、候補はこの辺」くらいで構いません。"ベース音の候補"が分かればOK です。
ある意味、ここだけが本当の「耳コピ」の部分と言ってもいいかもしれません。ベースの音さえ拾えるようになれば、あとはキーとダイアトニックなどの理論を使って、かなりの部分を整理しながらコピーしていくことができます。
② ベース音からキーを割り出す(Let It Be & Twist And Shout)
次に、そのベース音の並びからキーを推理していきます。
代表的なヒントはこんな感じです:
#### ✅ ヒント1:曲やセクションの「終止音」に注目する* 🎵 曲の最後のベース音(終止音)は、キーのルートになっていることが多い
ポップスやロックでは、最後のコード&ベースが
I(トニック)=キーのルート で終わるケースが非常に多いです。
* 🎵 Aメロやサビなど、フレーズが「いったん終わる」瞬間のベース音も、キーのルートであることが多い
ここで、ビートルズの曲を2つ例にしてみます。
##### 例1:Let It Be(キー=Cメジャー)サビをすごくざっくり書くと、
> C → G → Am → F / C → G → F → Cのような流れで進みます。
* 途中で F(サブドミナント)が出てくるので、
「Fがキーなのでは?」と一瞬思えてしまうのですが…
* Fは「Cメジャースケール」のメンバー(ダイアトニック)だから、出てきても不思議じゃないんだよ。
* よく聴くと、フレーズの「落ち着く場所」や、曲の終わりは C に着地します。
耳で意識してみてほしいのは、
* 歌が一区切りついたとき
* コード進行が「はぁ〜、帰ってきた」と感じるとき
そのときにベースが鳴らしている音は C になっている、という点です。
> F はたくさん出てくるけれど、 > 本当のゴールはいつも C に戻っている > → だからキーは Cメジャー、と考えられる。F はあくまで「途中で寄る場所(サブドミナント)」で、
最終的な終着点にはなっていないということですね。 ##### 例2:Twist And Shout(キー=Dメジャー)もう一つ、Cではないキーの例として「Twist And Shout」を見てみます。
ビートルズ版の代表的な進行は、ざっくり言うと:
> D → G → A を中心にした進行(I–IV–V)になっています。
* 途中で G や A に行きますが、
* フレーズの最後や曲の終わりは D に戻って終わる ことが多いです。
ここでも、
> いろいろなコードが出てきても、 > フレーズの終点として一番よく使われるベース音が > その曲の キーのルートになっていることが多いというポイントは同じです。
(実際の曲では、こうした基本のI–IV–Vに加えて、ノンダイアトニックなコードや装飾的な動きが入ることもありますが、ここではまず「どこに帰ってくるか」を感じ取ることだけを目標にしましょう。)
#### ✅ ヒント2:ベース音をスケールに並べてみるもうひとつの視点は、
> 「拾えたベース音が、どのメジャースケール/ナチュラルマイナースケールに > いちばんきれいに収まるか?」を考えることです。
例:ベースが C, G, A, F を繰り返しているなら
* Cメジャースケール:C D E F G A B
* その中に、C / G / A / F はすべて含まれている
→ 「これはキーCメジャーの可能性が高そうだな」と考えられます。
完璧に当てようとしすぎなくて大丈夫です。
まずは
> 「この曲は Cメジャーっぽい な」 > 「この曲は Fメジャーっぽい な」といった仮のキー候補(仮説)を立てることが大事です。
そのうえで、ダイアトニックや「寄り道」コードを使って
少しずつ答え合わせをしていけばOKです。
③ キーが分かったら、メジャー/マイナーのダイアトニックでコードを当てる
キーの仮説が立ったら、次は
> 「この曲はメジャー側か、マイナー側か?」をざっくり判断して、ダイアトニックコードを使って当たりをつけていきます。
* 明るく前向きな曲調なら → まずは メジャースケールのダイアトニック
* ちょっと暗め・切ない感じなら → ナチュラルマイナーのダイアトニック から試す
…と書くと簡単そうですが、
* メジャーなのに切ない曲
* マイナーなのに疾走感のある曲
もたくさんあります。
そこで覚えておくと便利なのが、平行調という考え方です。
* Cメジャー:C D E F G A B
* Aナチュラルマイナー:A B C D E F G
実はこの2つは、「使っている音(ダイアトニックのメンバー)」がまったく同じです。
こうした関係を平行調(パラレルではなく"相棒"みたいな関係)と呼びます。
つまり、
> 「この曲、CメジャーかAマイナーかよく分からない…」という場合でも、
> とりあえず Cメジャー(=Aマイナー)のダイアトニックチームを使えば、 > 音そのものは合ってくれるという安心感があります。
OtoTheoryの「コードを探す(Find Chords)」でも、
CメジャーとAマイナーは、基本的に同じダイアトニックが表示されます。
なので、「明るい/暗い」の判定に自信がなくても OK で、
まずはどちらか一方を選んで、実際に鳴らしながら確かめてみてください。
例えば、キーCメジャー(=Aマイナー)だと仮定したら:
* Cメジャースケール:C D E F G A B
* ダイアトニックコード:C, Dm, Em, F, G, Am, Bdim
先ほど拾ったベース音
(例:C, A, F, G …など)に対して、
* Cのとき → Cか、たまにAmかFかも?
* Aのとき → Amがまずは第一候補
* Fのとき → Fを当ててみる
* Gのとき → Gを当ててみる
というふうに、「そのキーのチーム(ダイアトニック)から優先的に当てていく」イメージです。
④ ダイアトニックから外れるところは「代理コード」と「定番の寄り道」を疑う
ダイアトニックだけで最後まで説明できる曲も多いですが、
現実の曲では、ところどころ ダイアトニックから外れるコード(ノンダイアトニック)も出てきます。
ここで役に立つ考え方が、大きく2つあります。
1. 代理コード(サブスティテュート)
* 似た役割を持つコード同士を入れ替えて使う
* 例:C の代わりに Am(どちらもトニック系)
* 例:F の代わりに Dm(どちらもサブドミナント系)
→ 「ダイアトニック内」での入れ替えが中心
2. 定番の「寄り道」コード
* 一時的に別のコードを強調する セカンダリードミナント
* 平行調などから1〜2音借りてくる 借用和音(モーダルインターチェンジ)
* 一部のセクションだけ、別のキーに近づく「部分的な転調」
この記事では、これらの細かい専門用語を覚える必要はありません。
大事なのは、
> 「ダイアトニック表にないコードにも、ちゃんと"パターン"がある」ということだけです。
耳コピのときには:
1. まずはダイアトニックで当ててみる
2. ちょっと違うなと思ったら、
近い役割の代理コード(C⇔Am、F⇔Dmなど)も試してみる
3. それでもどうしても当たらないコードが多いなら、
* そもそものキーの仮説が違う
* その部分だけ「寄り道コード」や小さな転調が入っている
可能性を疑って、もう一度キー探しに戻る
この「キーを見直して、ダイアトニック→代理コード→寄り道コードで再チャレンジする」という流れを何度か繰り返すと、
耳コピの精度とスピードがぐっと上がっていきます。
(セカンダリードミナントや借用和音については、別の記事でゆっくり掘り下げていきます。)
4) 耳コピが上手くなると、アドリブと作曲も同時に伸びる
ここまでやってきたことをまとめると、耳コピの練習はそのまま:
* キー感覚のトレーニング
→ ベース&終止音からキーを感じ取る力
* ダイアトニックの実戦練習
→ 「このキーなら、このチームからコードを選べばいい」が体に入る
* フレーズの"度数パターン"の収集
→ 後で自分のメロディやソロに再利用できる
に繋がっています。
結果として、
* 即興で弾くときに
「このキーなら、この音域が安全そうだな」が直感的に分かる
* 作曲するときに
「あの曲のあの雰囲気を、今のキーでやってみよう」が理論的にできる
* 好きなアーティストの"らしさ"を
自分の音楽の中に取り込める
ようになっていきます。
> 耳コピは「完コピ大会」ではなく、 > 自分の音楽語彙を増やすトレーニングだと考えてみてください。5) OtoTheoryでできる「耳コピサポート」
OtoTheoryは、耳コピの全部の答えを教えるアプリではありません。
大事な「キーを見つける」部分は、あえてユーザー自身の耳の訓練に任せています。
そのうえで、キーに当たりがついてから、こんなふうにサポートしてくれます。
① キーが分かったら「コードを探す」へ
1. 耳コピで「たぶんキーは Cかな?Amかな?」という仮説が立ったら、
OtoTheoryの 「コードを探す(Find Chords)」 を開きます。
2. そのキーに対して、
* メジャースケール もしくは
* ナチュラルマイナースケール
のどちらか基本となるほうを選びます。
3. すると、そのキーの
* ダイアトニックコード(コードのチーム)と
* フレットボード上の スケールトーン
が表示されます。
まずは、このダイアトニックコードを使って、
耳で拾ったコードを1つずつ当てはめてみてください。
さらに、「代理コード」の表示があれば、
そこから似た役割のコード候補も確認できます。
* 「ダイアトニックではFだけど、この場面はDmのほうがしっくりくるな」
* 「Cの代わりにAmで、ちょっと切ない雰囲気にしてるのかも」
といった気づきが得られます。
② メロディやソロはスケールトーンから探す
同じ画面のフレットボードには、選んだスケールのスケールトーンが表示されています。
* まずは、メロディやソロを
スケールトーンのどれかを使って探してみる
* 弾きながら、「ここまではスケールに収まっているな」「この1音だけ少し外れているな」
といった感覚をチェックする
多くの曲では、
> メロディやソロの大部分は、 > その曲のキーのスケール上の音になっています。もしスケールトーンだけではどうも合わない場合は、
* キーの仮説を見直すか
* 同じキーの中で、別のスケール(例:ペンタトニック、モードなど)を選び直して試してみてください。
③ 「コードは少し拾えたけどキーが分からない」ときは「コード進行」へ
耳コピをしていると、こんな状態になることもあります。
* コードは C, G, Am, F っぽいところまでは分かった
* でも、この曲のキーとスケールが自信を持って言えない
そんなときは、OtoTheoryの 「コード進行(Chord Progression)」 を使います。
1. 分かった範囲で、コード進行を入力する
2. 「分析」ボタンを押す
3. アプリが、その進行に合いそうな キーとスケールの候補 を提案してくれます
これをヒントにしながら、
* 自分の耳で感じたキーの仮説
* アプリが出したキー候補
を照らし合わせていくと、
徐々に「キーの探し方の勘」が鍛えられていきます。
6) まとめ:耳コピの"感覚"を、理論で再現可能にする
* 耳コピのコツは、「まずキーを見つけること」
* キーが分かれば、メジャー/マイナーのダイアトニックからコード候補を出せる
* ダイアトニックから外れるところは、代理コードや定番の寄り道コード、そしてキーの見直しで対応できる
* 感覚だけに頼るのではなく、理論を道具・武器として使うことで、耳コピはぐっとラクになる
* OtoTheoryは、
* キーの仮説を立てたあとの「ダイアトニック/代理コード/スケールの確認」
* 逆に、コードからキーを推測する「コード進行の分析」
を通じて、耳コピを強力にサポートしてくれる
次のステップとして:1. 好きな曲を1つ決めて、まずはベース音だけ耳コピしてみる
2. ベースの並びと終止音から、キーの仮説を立てる
3. OtoTheoryでそのキーを選び、
これを何曲か繰り返していくと、
「キーが見つかる=ほぼコピーができたも同然」という感覚がだんだん実感として分かってくるはずです。
次のステップ
- キーとスケールの関係を理解したい → 「キーとは?」
- ダイアトニックコードの仕組みを学びたい → 「ダイアトニックとは?」
- コードの基本を学びたい → 「コードとは?」

