OtoTheory
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キーとは?

曲の"重力"を知ると、進行の流れが見える

5min更新日 2025-10-30記事 4
> キー=曲全体をまとめる"中心音"。 > この中心音を知ると、コード進行がなぜ気持ちいいのか、メロディがどこに向かうのかが一気に分かります。

1) なぜキーを知ると音楽が見えるのか?

好きな曲を聴いていて、「なんか落ち着く」「ここで終わるとスッキリする」と感じたことはありませんか?

それはキー(調)の"重力"が働いているからです。

キーは、その曲の中心となる音(主音)を決めます。すべてのコードやメロディは、この主音を軸に"帰る場所"を感じながら動いています。

例:Cメジャーの曲では、C(ド)が主音。コード進行が C→Am→F→G→C と流れると、最後のCで「帰ってきた」という安心感が生まれます。

これを理解すると、耳コピや作曲のときに「この曲の中心はどこか」を特定できるようになります。


🎙️ ポールが感じていた"帰る場所"

> "When you're writing a song, you need a home base, a key that everything comes back to." > (曲を書くときは、全てが戻ってくる"本拠地"、つまりキーが必要なんだ。) > — Paul McCartney(複数のインタビューで言及)

ビートルズの曲の多くは、シンプルなコード進行なのに心地よさがあります。

例えば〈Let It Be〉はCメジャー。Cから始まって、最後にCに戻ることで"完結"の感覚を作っています。

彼らは感覚で"帰る場所"を掴んでいましたが、理論で言葉にすると、それがキー(主音)だと説明できます。


2) キー=音楽の"重力"

地球に重力があるように、音楽にもキーという重力があります。

* 主音(トニック):曲の中心となる音。これが"家"。

* 他のコードや音:主音に引き寄せられながら、時々離れて、また戻る。

この"引き寄せる力"を理解すると:

  • 耳コピ:「この曲の主音はどこ?」を特定できる
  • 作曲:「終わり方がスッキリしない」を解決できる
  • アドリブ:「この音で終わると気持ちいい」が分かる

3) キーを見つける最強の方法4ステップ

キーを特定することは、曲の「設計図」を手に入れるようなものです。以下の4ステップで、耳コピの精度を飛躍的に高めましょう。

ステップ1:曲の「着地点(最後のコード)」を探す

理論的正しさ:★★★★★(最重要)

多くの曲は、キーの主音(トニック・コード)で終わることで、聴き手に「物語が終わった」「家に帰ってきた」という解決感(終止感)を与えます。

* 実践テクニック

1. 曲の一番最後のベース音を、ギターやピアノで探します。

2. その音が「C」なら、その上で「Cメジャー」と「Cマイナー」を鳴らしてみます。

3. 曲の余韻と響きが一致した方が、その曲のキーである可能性が極めて高いです。(例:Cメジャーが合えば、キーはCメジャー)

ステップ2:曲の「出発点(最初のコード)」を確認する

理論的正しさ:★★★★☆(強力)

「家(主音)」から物語が始まることが多いように、曲の最初のコードも主音である可能性は非常に高いです。

* 確度アップステップ1(最後のコード)と、このステップ2(最初のコード)が同じであれば、そのコードがキーである確率は90%以上と言っていいでしょう。「家から出発して、家に帰ってきた」という構成が明確になるからです。

ステップ3:最強の「重力(G→Cの流れ)」を感じる

理論的正しさ:★★★★★(超強力)

これはプロも使う最も強力なテクニックの一つです。音楽には「緊張→解決」という強い流れがあり、キー(例:C)の5度上のコード(例:G)からキー(C)に戻る時、最も強い「解決感=重力」が働きます。(これはセクション5のG→Cの流れと同じです)

* 実践テクニック

曲中で最も「あ、解決した!」「スッキリした!」と感じる瞬間を探します。サビの終わりやAメロの最後によく使われます。

その「解決した先」のコード(例:G→CのC)が、キーの主音である可能性は絶大です。

ステップ4:「メロディの軸」で裏付けを取る

理論的正しさ:★★★★☆(最終確認)

コードだけでは確信が持てない場合、メロディは強力な裏付けとなります。メロディは多くの場合、キーの「軸となる音(主音)」に向かって進みます。

* 確認ポイント

* 曲中で何度も繰り返される、印象的な音は何か?

* 歌のフレーズの「着地点」となる音は何か?

* それらの音が、ステップ1〜3で見つけたキーの主音(例:キーがCなら「ド」の音)と一致しているかを確認しましょう。


4) メジャーとマイナーの違い

同じ主音でも、メジャーマイナーでは雰囲気が変わります。

キー主音雰囲気代表的な曲
CメジャーC(ド)明るい、安心感〈Let It Be〉
CマイナーC(ド)切ない、内省的多くのバラード
簡単な見分け方
  • メジャー:最後のコードが「明るい」感じ(例:C、G、F)
  • マイナー:最後のコードが「しっとり」感じ(例:Am、Dm、Em)

ただし、同じコードでもメロディや配置で感じが変わるので、耳で確かめるのが一番です。


5) コード進行とキーの関係

キーが決まると、そのキーに"合うコード"が自動的に決まります。

例:Cメジャーの場合

  • C(主音・家)
  • Dm、Em(副次的)
  • F、G(動きを作る)
  • Am(切なさ)

これらのコードを組み合わせると、自然な流れが生まれます。

→ これは「ダイアトニック」という概念です(詳しくは別記事で)。

重要なのは、主音(C)に戻ると安定感が出ること。

G→C のように、5度上のコードから主音に戻る流れ(ドミナント→トニック)は、特に強い"帰る力"を持っています。


6) キーを知るとできること

耳コピが速くなる

「この曲のキーはCメジャー」と分かれば、使われているコードの候補が絞れます。

最初から全部のコードを探す必要がなくなり、キーに合うコードを中心に探せばいいと分かります。

作曲で迷わなくなる

「この曲のキーはAマイナー」と決めると、使うコードの方向性が見えます。

終わり方がスッキリしないときは、主音(Aマイナー)に戻ると解決することが多いです。

アドリブで"外さない"

キーが分かると、そのキーのスケール(音階)を使えば"外さない"アドリブができます。

例:Cメジャーの曲なら、Cメジャースケール(ドレミファソラシ)を使えば、どのコード上でも響きが合います。


7) アプリで体験しよう

OtoTheoryでは、キーの"重力"を体感できます:

  • コード進行を作る:主音から始まって、主音に戻る流れを試す
  • キーを変える:同じ進行を別のキーで鳴らして、雰囲気の違いを感じる
  • スケールと合わせる:キーが決まると、使えるスケールが自動的に分かる

感覚で「気持ちいい」と思っていたものを、理論で説明できるようになります。


8) まとめ

  • キー=曲の中心音(主音)。すべての音がこの音に"帰る"。
  • キーを見つける:最後のコード、繰り返し出る音、コード進行の"帰る場所"。
  • メジャーとマイナー:同じ主音でも、雰囲気が変わる。
  • キーを知ると:耳コピ・作曲・アドリブがすべて楽になる。

音楽の"重力"を感じ取れるようになると、理論が実践に直結します。


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