OtoTheory
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スケールとは?

メロディとアドリブを「迷わず」作るための地図

8min更新日 2025-11-18記事 5

音楽理論において、最も基本的かつ重要なツールが「スケール(音階)」です。

一言で言えば、スケール=あるルート(基準音)をもとに並べた"使ってよい音"の集合体のこと。

料理に例えるなら、スケールは「食材リスト」のようなものです。「イタリアンを作るなら、トマトとオリーブオイルとバジルを使おう(味噌や醤油は一旦しまっておこう)」と決めるようなもの。 スケールを知ることは、メロディ作り、耳コピ、そしてアドリブ(即興演奏)における「材料表」を手に入れることと同じです。


1) スケールは何のため?

なぜ、わざわざ「使う音」を制限するのでしょうか?それは、「心地よい響き」を効率よく生み出すためです。

🎹 メロディの素材箱として デタラメに音を弾いても曲にはなりません。曲の世界観(キー)に合った音だけが集められた「スケール」という箱から音を選べば、誰でも外すことなくメロディを作ることができます。

👂 耳コピの最強のヒント 「次の音はなんだろう?」と探すとき、指板上のすべての音を探す必要はありません。「この曲はCメジャーだ」と分かれば、探すべき音は12音中7音に絞られます。スケールは耳コピのスピードを劇的に上げます。

🎸 アドリブ(即興)の地図 スケールは「ここを弾けば安全(協和する)」という地図です。慣れてくれば、「あえてスケール外の音(アウト)」を使ってスリルを演出することもできますが、まずは地図上の安全な道を知ることがスタートです。

度数(Intervals)が分かっていれば、スケールは「どの度数(Ingredient)を使うか」というレシピになります。詳細は別記事「度数とは?」を参照してください。


🎙️ ジョージ・ハリスンの"選択された音"

> "When you're improvising, you need to know which notes will work. That's where scales come in." > (アドリブをするときは、どの音が合うかが分からないといけない。それがスケールの役割だ。) > — George Harrison(複数のインタビューで言及)

ビートルズのソロは、シンプルなのに効果的です。

例えば〈Something〉のソロは、Aメジャースケールを使った滑らかな流れ。音数は少ないのに、コード進行に完璧に溶け込んでいます。

スケールを知らなくても、彼らは感覚で"合う音"を選んでいましたが、理論で言葉にすると、それがスケールだと言えます。


2) メジャー/マイナーの基本パターン

スケールには無数の種類がありますが、ポップスやロックで使うのは9割が「メジャー」と「マイナー」の2つです。これらは音程の全音(W)と半音(H)の並び順で定義されます。 ※ギターにおいて、全音=2フレット分、半音=1フレット分です。

🌞 メジャースケール(明るい・基本)

別名:イオニアン(Ionian)

公式:W – W – H – W – W – W – H (全・全・半・全・全・全・半)

Cメジャーの例: C – D – E – F – G – A – B – C

ミとファ(E-F)、シとド(B-C)の間が「半音(1フレット)」で、それ以外は「全音(2フレット)」です。

「ドレミファソラシド」はこの並びでできています。

🌙 ナチュラルマイナースケール(暗い・切ない)

別名:エオリアン(Aeolian)

公式:W – H – W – W – H – W – W (全・半・全・全・半・全・全)

Aナチュラルマイナーの例: A – B – C – D – E – F – G – A

実は、CメジャースケールとAナチュラルマイナースケールは「使っている音が全く同じ(構成音が同じ)」です。

スタート地点(ルート)を「ド(C)」にするか「ラ(A)」にするかだけで、明るさがガラリと変わります。これを「平行調(Relative Key)」と呼びます。

💡 ギタリストへのポイント: ピアノと違い、ギターは「形の平行移動」が得意な楽器です。この「全・全・半...」という指板上の形(シェイプ)を一つ覚えれば、そのままズラすだけで、CメジャーもDメジャーもGメジャーも弾けるようになります。音名で暗記するより、「指の形(パターン)」で理解するのが近道です。


3) 度数で見るスケール(ダイアトニックの入口)

スケールを深く理解するには、音名(C, D, E...)ではなく、ルートからの距離である「度数(1, 2, 3...)」で見る癖をつけましょう。

メジャースケールを度数で並べると 1, 2, 3, 4, 5, 6, 7 となります。

この7つの音を積み重ねてできるコードのグループが「ダイアトニックコード」です(詳細は「ダイアトニックとは?」で解説)。

スケール内の各音には、それぞれの「役割(キャラクター)」があります。

3度(M3): 明るさの決定打。「メジャー」か「マイナー」かを決める最も重要な音です。 1度(R)と5度(P5): 安定の軸。フレーズの終わり(着地)に使うと、落ち着いた感じが出ます。 4度と7度: メジャースケールの中で、少し扱いが難しい(不安定な)音。これらをどう扱うかでセンスが問われます。

メロディを作るとき、「どの度数を、どのタイミングで鳴らすか」で、同じスケールを使っていても表情が劇的に変わります。


4) ペンタトニックとブルーススケール(実戦向けの近道)

「7つも音があると、どれを弾けばいいか迷う」「ミストーンが怖い」

そんなギタリストのためにあるのが、音を5つに厳選した「ペンタトニック・スケール」です。

ペンタトニックは、メジャー/マイナースケールから「ぶつかりやすい(扱いにくい)2音」を抜いたものです。だから、適当に弾いても音が外れにくく、アドリブ入門に最適です。

メジャーペンタ: 1, 2, 3, 5, 6

(Cメジャーなら:C, D, E, G, A)※4度と7度を抜いた

マイナーペンタ: 1, ♭3, 4, 5, ♭7

(Aマイナーなら:A, C, D, E, G)※2度と♭6度を抜いた

🎸 ブルーススケール(魔法のスパイス)

ロックやブルースで聴ける「あのカッコいい響き」の正体はこれです。

マイナーペンタに、「♭5(フラットファイブ)」という経過音を1つ足した6音スケールです。

Aブルーススケール: A, C, D, E♭, E, G

この「E♭」がブルーノートと呼ばれ、独特の泥臭さとカッコよさを生みます。

まずはマイナーペンタを1つのポジションで覚え、そこに「スパイス」として♭5を足してみる。これだけで、あなたのソロは一気にプロっぽく聞こえるようになります。


5) ギターでの使い方(ポジションと移調の考え方)

理論書を読んで終わらせず、ギターを持って音を出してみましょう。

ポジション(ブロック)で覚える 指板全体を一気に覚えるのは不可能です。まずは「6弦ルートの形」「5弦ルートの形」といったブロック(ポジション)を1つずつ覚えましょう。 指で度数を感じる 「人差指がルートなら、小指は♭3度だな」といったように、指の位置関係で度数を体感してください。これができると、キーが変わっても即座に対応できます。 実践:着地点(ターゲットノート)を決める スケール練習というと、下から上までパラパラ弾きがちですが、それでは「練習」にしか聞こえません。

「1小節目の最後はルート(1度)に戻る」

「盛り上げたいところで3度を弾く」

といったように、「着地する音」を決めて弾くと、説得力のあるアドリブになります。

OtoTheory のフレットボード機能を使えば、指定したキーのスケールが指板上に可視化されます。ペンタとメジャーを切り替えたり、自動再生に合わせて弾いてみることで、耳と指でスケールの響きを体得してください。


6) まとめ

スケールとは: ルートをもとに並べた「使ってよい音の材料表」。 役割: メロディ作り、耳コピ、アドリブの地図になる。 構造: メジャーは「全全半全全全半」。マイナーは「全半全全半全全」。 実践: 7音すべてを使うのが難しい場合は、5音の「ペンタトニック」から始めよう。 ギター活用: 形(ポジション)で覚えれば、平行移動するだけで全キーに対応できる。

スケールという「横の並び」を理解したら、次はそこから生まれる「縦の積み重ね」、つまりコードの話に進みましょう。

次は「ダイアトニックとは?」の記事で、スケールからどのようにコードが生まれるのかを解説します。


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