OtoTheory
← 学習ページに戻る

代理コードで進行を着替えさせよう

同じドラマ、違う表情──チームメイトを入れ替える技術

5min更新日 2026-02-28記事 10

前の記事では、トライアドに1音足すだけで進行の空気感が変わることを体験しました。今回は、コードそのものを同じ役割を持つ別のコードに入れ替えるテクニック──代理コードを学びます。


⚽ 「同じポジション」のチームメイト

ダイアトニックの記事で、7つのコードをサッカーチームに例えました。コード進行の記事では、そのチームが3つの役割グループに分かれていることを学びました。
役割メンバー担当
トニック(T)I(キャプテン)、iii(リンクマン)、vi(副キャプテン)安定・着地
サブドミナント(S)IV(攻撃的ミッドフィルダー)、ii(内省的ミッドフィルダー)展開・浮遊
ドミナント(D)V(ストライカー)、vii°(スペシャリスト)緊張・帰りたい力

代理コードとは、同じ役割グループの中で、メンバーを入れ替えること。サッカーでいえば「同じポジションの選手交代」です。

ストライカーを別のストライカーに交代しても、チームの戦術は変わらない。でも、プレースタイルは変わる。代理コードは、まさにこれと同じです。


🔄 なぜ入れ替えが成立するのか?

同じ役割グループのコードが入れ替え可能な理由は、構成音が2つ重なっているからです。

コードの記事で学んだ3音のうち、2音が共通するということは、響きの土台が同じということ。だから入れ替えても、進行の「ドラマ」が壊れません。

Cメジャーキーで見てみましょう:

入れ替えコード①コード②共通する音
I ↔ viC(ド・ミ・ソ)Am(ラ・ド、ミ
I ↔ iiiC(ド・Em(・シ)ミ、ソ
IV ↔ iiF(ファ・Dm(レ・ファファ、ラ
V ↔ vii°G(ソ・Bdim(・ファ)シ、レ

2つの音が重なっているから、聴いた印象は「似ているけど、ちょっと違う」。この「ちょっと違う」が、進行の表情を変える鍵です。

そしてもうひとつ。コードが変わるということは、ルート音(ベースの音)も変わるということ。たとえば C→F(ド→ファ)というジャンプする動きが、C→Dm(ド→レ)という滑らかな階段状の動きに変わります。代理コードは表情だけでなく、ベースラインの流れにも変化をつけられるテクニックです。


🎭 代理コードの実践──定番3パターン

パターン①:I → vi(明るい→切ない)

最もよく使われる代理です。キャプテン(I)を副キャプテン(vi)に交代すると、明るい安定感が切なさを帯びた安定感に変わります。

`

元の進行: C → F → G → C

代理バージョン: C → F → G → Am

`

最後のCをAmに変えただけ。ドラマの構造(T(トニック)→S(サブドミナント)→D(ドミナント)→T(トニック))はまったく同じなのに、エンディングの表情が「ハッピーエンド」から「余韻のある終わり」に変わります

ポップスで「サビの最後だけ切なくしたい」というとき、この I → vi の入れ替えが定番の手法です。

パターン②:IV → ii(浮遊→内省)

サブドミナントの中での入れ替え。IV(F)の開放的な浮遊感が、ii(Dm)に変わると内に向かう、考え込むような雰囲気になります。

`

元の進行: C → F → G → C

代理バージョン: C → Dm → G → C

`

Fの「ぱっと視界が広がる感じ」と、Dmの「ちょっと立ち止まって考える感じ」。どちらもサブドミナントだけど、性格が対照的です。

パターン③:V → vii°(王道→スリリング)

ストライカー(V)をスペシャリスト(vii°)に交代。V(G)の堂々とした緊張感が、vii°(Bdim)に変わると不安定でスリリングな緊張感になります。

`

元の進行: C → F → G → C

代理バージョン: C → F → Bdim → C

`

これはかなり上級者向けの色合い。使いすぎると不安定になりますが、ここぞという場面で1回使うと、聴き手をハッとさせます
※ トライアドのBdimはクラシック寄りの響きになるため、ポップスではあまり単体で使われません。実際の楽曲では、次のセクションで紹介する7thコードのBm7♭5にするか、Gのベース音だけをBに変えたG/B(オンコード)として使うのが定番です。


🎨 代理で進行を「着替えさせる」

代理コードの本質は、進行の構造(ドラマ)を壊さずに、表情だけを変えること。洋服の着替えに似ています。

いろんな進行で「着替え」を試してみましょう:

元の進行代理を使ったバージョン変わったこと
C → F → G → CAm → F → G → C出だしが切なくなった
C → F → G → CC → Dm → G → C中盤が内省的になった
C → G → Am → FC → G → Am → Dm最後が柔らかくなった
C → Am → F → GC → Am → Dm → Gサブドミナントが内向きに

どのバージョンも、T(トニック)→S(サブドミナント)→D(ドミナント)→T(トニック)の骨格は同じ。「同じストーリーを、違う語り口で話す」感覚です。

コード進行の記事で作った進行を、代理コードで着替えさせてみてください。1つの進行から、何通りものバリエーションが生まれます


🔗 7thコードとの組み合わせ

前の記事で学んだ7thコードと代理コードを組み合わせると、さらに表現の幅が広がります。
元のコード代理7th化した代理効果
C→ AmAm7柔らかく切ない着地
F→ DmDm7ふわっとした内省
G→ BdimBm7♭5じわっとした緊張
Am→ CCmaj7おしゃれな安定に変換

代理で「表情」を変え、7thで「質感」を加える──この2つを組み合わせることで、たった7つのダイアトニックコードから、驚くほど多彩な進行が生まれます


🎛️ OtoTheoryで代理コードを体験する

OtoTheoryでは、ここまで学んだ代理コードの仕組みを「置き換え」という機能名で提供しています。音楽理論の教科書では「代理コード」と呼びますが、アプリでは「同じ役割のコードに置き換える」という操作そのものに焦点を当てて、より直感的な名前にしています。

* ビルド画面のインサイトエンジン「置き換え」タブ(Pro機能):コード進行を作った状態で既存のコードチップをタップすると、画面上部にインサイトエンジンが表示されます。「置き換え」タブを選ぶと、そのコードと同じ和声機能を持つ置き換え候補がカードで表示されます。たとえば Am をタップすると「同じトニック機能、明るく」「同じトニック機能、軽やかに」といった提案が並びます。試聴ボタンで音を確かめて、気に入ったら「入替」ボタンをタップするだけ──音楽を止めずに、コードを即座に試せます。ここで提案されるのは、この記事で学んだダイアトニック内の同機能コード同士の入れ替えそのものです

* インサイトタブの「コードの置き換え」セクション:画面下部のタブバーにある「インサイト」タブでは、置き換えをより幅広く探索できます。作成した進行の全セクション(Verse・Chorus・Bridgeなど)のコードチップが一覧表示され、任意のコードを選ぶと代理コードだけでなく、7th拡張や関係調のコードも含む置き換え候補が詳細な説明付きで提案されます。たとえば Am を選ぶと「Am7:ナチュラルマイナー7th」「Am6:ドリアンカラーのマイナー6th」「C:同じ音を持つ関係調のメジャー」のように、使用例の楽曲名(Stairway to Heaven、Smooth など)まで表示。試聴して「置換」ボタンで即座に入れ替えられます

* フレットボード表示:元のコードと置き換え候補の構成音をフレットボード上で見比べれば、「2音が共通している」ことが視覚的に確認できます


✅ まとめ

代理コードは、進行の「ドラマ」を壊さずに「表情」だけを変えるテクニック。同じ役割グループのコードは構成音が2つ重なっているから、入れ替えても自然に響く。

* トニック代理(I ↔ vi ↔ iii):安定感の中で、明るさ↔切なさ↔微妙な色彩を切り替え

* サブドミナント代理(IV ↔ ii):開放的↔内省的な浮遊感を切り替え

* ドミナント代理(V ↔ vii°):王道の緊張↔スリリングな緊張を切り替え

* 7thコードと組み合わせれば、バリエーションはさらに倍増する

* まずはI → vi の入れ替えから試してみるのが最も効果的な第一歩

次の記事では、ダイアトニックチームのから助っ人を呼ぶ──ノンダイアトニックコード(借用和音)の世界に踏み出します。